週末、古本屋を巡るのが趣味だ。2年前、いつものように棚を漁っていたら、ボロボロの文庫本を見つけた。表紙には「星の王子さま」とあり、ページには誰かの走り書きがびっしり。興味本位で買って帰り、読んでみると、メモは本の内容への感想や、読者の人生の悩みだった。
筆跡から、若い女性が書いたと想像。彼女は夢と現実の間で揺れ、「自分に何ができるのか」と綴っていた。その言葉に、会社員としてルーティンに埋もれていた自分が重なった。メモの最後には「自分を信じて進む」と決意が書かれていた。感動し、本を大切に保管。
以来、自分のやりたいことを少しずつ始めた。オンラインでライティングの講座を受け、小さな記事を書き始めた。最初は自信がなかったが、読者からの「共感した」というコメントに励まされた。古本屋のあの出会いが、人生の転機だった。今も、悩むたびに本を開き、彼女の言葉に背中を押される。いつか、彼女に感謝を伝えたい。